川田自動車物語

くるま工房オープンまでの奮闘記!

プロローグ

弊社の周辺は、工場や倉庫が多く、中でも自動車修理工場がたくさん建ち並ぶ地域です。しかし、2008年のリーマンショック以降は、馴染みのあるくるま屋さんがポツン・ポツンと姿を消していきました。 毎朝、これらの整備工場さんの前を通るたび、なんともさみしい想いになりました。 ただこの時は、新たに工場を借りるという考えはまったくなく、10年後の目指すべき姿をイメージしながら、日々の小さな一歩をしっかりと積み重ねていくことだけ考えていました。

 

新人営業マンとの出会い

新人営業マン栗原君との出会い

2009年9月  ある日突然!とある営業マンが、弊社へ来て「交差点角の工場を借りてくれないか」と、話を切り出しました。この工場を管理する貝沼建設の新人「栗原君」です。 彼は、猫背で「のぼーと」していて、話の強弱がなく、「へらへら」していて、やる気があるのかないのか解らない・・というのが第1印象でした。きっと、「先輩からあそこの工場に営業に行って来い」って言われたから来た!そんな新入社員じゃないかなと思ったわけです。 最初は家賃だけ聞いて「無理、無理」とほぼ お決まりの門前払いでした。 しかし、この栗原君、とてもしぶとかった。

よっぽど行くところが無いのか、どこに行っても断られるのか、一週間に一度ぐらい現れては、少しずつ少しずつ、こちらの「ふところ」に入ってきます。 面白いことにこれが、営業トークが上手だと、みんな警戒するでしょうけど、彼は、話がうまくないので、逆にこちらが心配になってきます。「うちより、あそこの会社にいったらどうか」とかアドバイスしたりして、そこがダメだと、また戻ってきて、「じゃぁ、あそこに行って来いよ!」と紹介したり、いつの間にか、そんな関係になっていました。

そうこうしているうちに、借りるつもりもないのに「もう少し家賃が安かったらなぁ」なんて、軽い気持ちで言っちゃったものだから、この栗原君! その気になって何度も大家さんと交渉してくれました。そのお陰で、少しずつ家賃が下がり、だんだんと、現実味を浴びてくる状況にまで話が進んでいきました。

当社には、自動車整備工場と歩いて3分のところに板金塗装工場があります。丁度その中間に位置するのが、この工場です。私たちの整備工場は、場所が狭く限界がありましたので、いつかは大きくする必要がありました。でも、まさかこんなに早くやってくるとは思ってもみませんでした。

さて、貝沼建設の栗原君が粘り強く大家さんと交渉していただいたお陰で、当社としても重い腰が徐々に上がり、「思い切って挑戦しよう」という気持ちが高まりました。 そして、2010年3月終わりに契約し、オープンを6月1日に定めます。

店づくり「くるま工房への想い」

くるま工房店づくり

工場を借りることが決まると、今度は、この工場をどのようにするのかで頭が一杯になりました。工場の図面を見ながら、イメージを膨らませます。外壁・内壁は?事務所は?設備は?電話は?看板は?予算を割り振り、優先順位を決め、レイアウトを書き、図面に落とし、何度も書き直します。

新しい工場の名前は、「くるま工房」とし、全体のテーマは「おもちゃ箱」、工場に入った時の空間テーマは「わくわく感」とします。 自動車整備は、サービス業です。車を直すことはもちろんですが、車はひとの生活を楽しく快適にする存在だと思います。こうした、お客様の大切なお車を預かる修理工場は、清潔感にあふれ安心して預けられる場所でありたいし、一人ひとりの要望や希望にあわせた提案や、丁寧に修理し創り上げる場にしたいと思っていました。「くるま工房」という工場名はそんな想いから生まれました。

借りる工場の外壁内壁は、継ぎはぎだらけで、汚れが目立つ状態でしたので綺麗に塗装することにしました。色については、迷いましたが、「車」と「整備士」が一番輝いて見える色にしたいと考えていましたので、「まっ白」に決めました。そしておもちゃ箱を開ける時のわくわく感を出すために、工場内の鉄骨の一部を赤に塗ることにしました。

 

塗装屋さん

塗装色については、塗装屋さんと意見がぶつかります。

自動車修理屋さんは、油で直ぐに汚れるから、まっ白にするのはやめたほうがいい。どうしてもまっ白にしたいなら、白に近いクリームか、白に限りなく近いグレーだとかにすべきだ。また、柱の一部だけを赤にするのではなく、全ての柱を赤にしたほうがいい。柱は赤より薄い紫にしてはどうか。腰下の壁は、色を変えたほうがモダンになって良い。

プロの塗装屋さんの意見は、参考になります。その意見や提案があったからこそ、何度も考えました。そして、塗装屋さんには心配をかけましたが、やはり壁は「まっ白」に、鉄骨は一部だけ「赤」にすることにいたしました。

確定した塗装方法は、外壁は、つやありのまっ白に、内壁は、つや無のまっ白。鉄骨は、一部をつやありのまっ白に、一部をつやありの赤。工場入口の扉は、つやありの赤。腰下の壁は、つやありの白に塗り塗り方を変えることとしました。

くるま工房塗装の様子

塗装屋さんとは、なんども意見を交換しお互いに目的をはっきりさせることができ、工場に対する想いを共有できました。この塗装屋さんにお願いして本当に良かったと思います。想いの共有とは、目的を共有できるということだと思います。目的、その道のりへの意見はお互いさまざまですが、同じ想いを共有していますので、たどり着く先は同じです。今回、塗装色については、私たちの意見となりましたが、塗装が仕上がるにつれ、これまで気にならなかった箇所が気になりだします。壁の隙間に空いた小さな穴が黒く見えたり、コンプレッサーのネズミ色が汚く見えたり、2柱リフトの汚れが気になったり、エアコンの室外機が外壁の白と浮いて見えたり、事務所ドアのくすみが汚れて見えたりします。

塗装屋さんは、「これもせっかくだから白に塗っておこうか、この穴は埋めておこうか、自分もせっかくやるならいい仕事したいから!」そう言ってどんどん綺麗にしてくれました。最後は、まるで自分の工場かのように、看板についても、意見をいってくれて、工場を見つめる目は、私と同じような愛おしい目で見てくれていました。

下の画像は、当初の見積りには入っていないけど、「せっかくだから」といって塗装してくれた個所の一部です。

塗装屋さんがついでに塗装してくれました

天井のバツ印

天井のバツ印

真っ黒だった工場内の壁が、少しずつ白く塗られていく様子を見ていた時、鉄骨を補強するバツ印が目に入ります。汚いバツ印が白色に変化して、全てのバツ印が壁同様に綺麗になり、目立たなくなっていました。

「ひとつだけバツを残してほしい。」

そんな想いが突然わいてきました。

ひとには、いくつものバツ(欠点)があります。

私の場合、人との関わりが増える中、そんな欠点を見つめ直し自分を知ることができるようになりました。そして、×(ばつ)をかくす必要はまったくないなぁと感じられるようになりました。

決して○(まる)じゃない行動だけど、自分の×を知ることができたために、×(バツ)じゃない立ち居振る舞いができるようになったと思います。でも、ひとつぐらい、大きなバツが目立っても、いいんじゃないかと思います。

バツ(欠点)は、その人の魅力の一部だと思います。全てのバツ(黒)を丸(白)にする努力より、ひとつぐらい大きなバツを大切にし、お互いのバツ(欠点)を認め合い、支え合う仲間でいたい。

そんな願いを込め、天井の一番目立つ箇所に赤いバツ印を入れてもらいました。

目的を達成するための提案力

くるま工房の事務所デザイン

事務所のレイアウトが完成し、工務店に見積りをお願いしました。工務店の見積りを見てびっくり、予算を大幅にオーバーしていたからです。限られた予算の中で、最大の効果を出すためには、どうしたらいいのか?色んな方に相談しました。寸法を少し減らすだけで、ぐんと安くなることや、上の写真にあるようなカウンターは、大工さんより、家具屋さんに頼むことにしました。当初の見積もりより50%近く削減できました。

家具屋さんとの打ち合わせの時です。私が「ここは、こんなふうにしたい!これぐらいの寸法がほしい」と、図面を見ながら話していると、「どんな思いで工場を建てるんですか?」と聞いてきました。私たちの想いをお話しすると、「じゃここはこうしたほうがいいですね。ここはこうするとさらに良くなります」と、私たちの想いから、もっと良くなる方法を提案し、さらには、こうすると、もっと予算をおさえられると教えてくれました。私たちも同じですが、良い仕事をするためには、お客様の目的をしっかり共有し、そのために必要な方法を丁寧に提案する力「提案力」が大切だと思います。この工務店さんから改めて提案力の大切さに気付きました。

「目に見える商品を売ってはいけない!目に見えない想いを売らなければいけない!」教訓です。

 

何もない事務所で送別会

送別会

20年間一緒に働いた仲間が退社するということで、送別会を開きました。

まだ、椅子も何もない、かろうじてカウンターだけの事務所です。ここで送別会をしようと言ってくれたのは、整備工場の工場長です。退社する社員には、この新しい工場は関係ない場かもしれませんが、工場長の想いはきっと「ここで俺たちまだまだがんばるから、何かあったらいつでも戻ってこいよ」と、伝えたかったのかもしれません。 立食のビュッフェスタイルが、いつの間にか、地べたにみんなで座り、退社する社員を囲みながら思い思いに言葉をかけあいました。

いつもお弁当を頼んでいるお弁当屋さんが、送別会という話を聞いて、飲み物を差し入れしてくれました。ありがとうございました。

 

2柱リフト設置

2柱リフト設置

自動車整備には、この2柱リフトがかかせません。今では様々な種類のリフトが有りますが、昔からあるこのタイプのリフトが一番使いやすく、どんな整備にも対応してくれる頼もしいリフトです。

設置場所は作業効率を考え工場奥の左に斜めにして配置します。

2柱リフトは、コンクリートの上にアンカーで打ってそのまま設置することも可能ですが、どうしても段差ができてしまうため車高の低い車などの整備に不向きとなります。そこでコンクリートに穴を開け埋め込むことにしました。

まずは、コンクリートカッターでコンクリートに穴を開けます。砂利を引きブラケットを配置し、水平を取ります。配置が決まったら、コンクリート側面に穴を開け、数本の鉄柱を数カ所に差し込みます。その鉄柱とブラケットを溶接で固定し、その上に、カラーコンクリートを流し込み丁寧に仕上げていきます。おおよそ2日で設置完了です。コンクリートがしっかり乾くまで一週間ほど寝かせて完成です。

2柱リフトが設置しやっと整備工場らしくなってきました。稼働する日が待ち遠しいです。

ここに赤がほしい

サントリー赤い自動販売機

外壁の足場が撤去され、まぶしいぐらいにまっ白な壁が現れました。

この角に、赤い何かがほしいと直感的に思いました。最初に 頭に浮かんだのは、赤枠のホワイトボードを設置して、月ごとのお勧めサービスなんかを案内してはどうかなと思いましたが、いまいち面白くないし、宣伝してます!という感じは工房という雰囲気にあわない。そこで自動販売機を利用した広告デザインにしようと考えました。

赤といえば、コカコーラの自動販売機です。 早速、近くにあるコカコーラの自動販売機を見に行きました。コカコーラの赤は、私たちがポイントで塗った赤色と、同じ赤でも違います。当社の会社ロゴ(ゴシック体)とコカコーラ(筆記体)のフォントもデザイン的にあいません。その隣に偶然あったのがサントリーの自動販売機です。サントリーのフォントは、私たちのロゴと同じゴシック調ですが、自販機の色は青色です。「サントリーが赤だったらよかったのに、う〜ん!困った。よっしゃ、だめもとでサントリーと交渉して赤に塗ってもらおう。 」

そして、テイスターの回答は、「売上が見込める場所の場合は、塗り替えることはあります。しかし、弊社のライバル会社であるコカコーラと同じ赤色に塗ることはできません!」と、バッサリ。

不思議なもので、断られると、「何とかしたい」という思いがどんどん膨らみます。赤色だけど、コカコーラの赤とカラー番号が違うことを説明し、売上予測を立て「あーでもない、こーでもない」と理屈らしからぬ「へ」理屈を並べ、時間はかかりましたが、やっと許可が降りました。

設置場所の幅が狭いため、大きい自販機は置くことができませんでしたが、とても満足しています。おまけに、弊社の広告までいれていただきましたので・・・・

これが日本に1台だけの「サントリー(SUNTORY)赤い自販機」です。中のジュースは、事務員さんの好みです。全て100円ですよぉ。6月1日までには、一番上のボス(青ベース白文字)が白ベースの赤文字に変更され、PEPSIの広告が弊社の広告になる予定です。ちょっと楽しみです^^

タイヤラック

くるま工房の新設にあたって、タイヤラックを制作しました。

支線撤去

当社のサービスの一つにタイヤ預かり保管サービスがあります。このサービスは、とてもお値打ちで便利なサービスなので皆様からもご好評いただいています。

年々サービスをご利用するお客様が増える中、効率良く出し入れし素早く履き替えする必要がありました。

そこで、くるま工房の一部スペースを利用して移動式のタイヤラックを設置することにしました。このラックのお陰で、お客さまもタイヤがどのように保管されているのか一目で解りますので安心してお預けいただけるものと思います。

タイヤラックには、一基24セット(計96本)のタイヤがのせられるよう設計しました。試作段階では、試しにタイヤを載せて、タイヤの配置に無理が無いか、出し入れはスムーズか、移動するために何人ぐらい必要なのか、などをテストし、何度もキャスターを変更したりフレームの強度を修正したりしました。

タイヤラックは十基制作しましたので、240セット(計960本)の保管が新たに可能となりました。タイヤを保管するために十分な場所を確保いたしましたので、タイヤの保管にお困りの皆さんは、どうぞご遠慮なくお問い合わせくださいませ。タイヤ預かり保管サービスはこちらよりご予約ください。

 

この支線じゃま

「この支線撤去できないかなぁ」社員のつぶやきです。彼は、工場前の駐車スペースが思った以上に狭く、お客様が誤って入り口の支線に車をぶつけないか心配しています。おまけに、近くに高校があるので、朝や夕方は多くの学生さんがこの歩道を通ります。視界は少しでも広いほうが安心です。早速、中部電力へ相談すると、直ぐに見に来てくれました。

支線撤去

担当者の説明は、この支線は電線を補強するためのもので、撤去するには、別の電柱を移動し、そっちに支線のワイヤーを入れる必要があるとのこと。支線の撤去費用だけなら37,000円ですが、電柱の移設費用が別でかかるので、全部で35万円ぐらいかかるといわれました。支線を移動するためだけに、35万円!痛いなぁ。

「ここの支線は、車が出入りする時、死角になって危険だから、そんな35万円といわず、お金がかからんように上手に撤去してくれよ。」と、猫なで声で頼みます。担当者は、ちょっと相談してからまた連絡しますと、その場を立ち去ります。 案外いってみるもんだな、もしかすると何とかなるかもしれないなぁと感じました。

1週間ぐらいすると、電話が入りました。支線の撤去費用37,000円だけで工事をしてくれるとのことです。理由を聞くと、今回の件で移動しなくてはいけない電柱が、ちょうど交差点近くにあること、歩道が狭く歩行者に危険が及ぶ可能性があること、このような場合の移設費用は、中部電力で出せるらしいのです。

助かりました!

いよいよ看板設置

くるま工房看板設置

迷いに迷った看板がいよいよ設置です。真っ白な屋根に赤い看板が光ります。

この看板も、「誰に対して、何のために必要なのか」その目的から考え、デザインを起こしました。ターゲットはひとつに絞りました。設置場所は、運転手が見て一番目立つ箇所にしました。自分たちが起こしたデザインに、看板屋さんの意見を参考に制作しました。

看板が設置された瞬間、ピリット背筋がのびました。

 

夢は大きく、でも、まずは小さな一歩から・・

私たちは、工場が立ち並ぶ一番北側を借りました。当面の目標は、真ん中の工場を借り、次いで南端の工場も借りることです。そして、ゆくゆくは、道を挟んだ土地を購入し、工場を建てることです。いまでも名古屋市や愛知県、中部地方以外の日本中の方からいろいろなご相談、サービスのご要望をいただきます。夢は、川田自動車くるま工房店を関西方面に建て、四国、九州、関東、東北、北海道、日本全国にサービス工場を広げ、ひとりでも多くのお客様に安心し、気軽に立ち寄れる自動車屋さんとなることです。

前は、やれそうにないことは口にしませんでしたが、最近は、むしろ、やれそうにないことを口にするようにしています。口にしていると、だんだんその気になって本当にそうなるような気がしてくるからです。口にしている自分が「そんなわけないだろう」って笑っちゃうんですが・・・いいじゃないですか!^^。

 

2010年6月1日オープン

株式会社川田自動車くるま工房

愛知県名古屋市北区五反田町189番地〒462-0011

TEL(052)902-5566 FAX(052)902-5575

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