川田自動車物語
ホスピタルクラウン
■ ホスピタル・クラウンとは
「闘病中の子どもたちに笑いを」
ホスピタル・クラウン(ピエロ)とは、病気で苦しんでいる子どもたちのもとをプロのクラウンが定期的に訪問し、あたたかい笑いを通して子どもたちの明るさと元気を引き出す運動です。
■ 私とホスピタル・クラウンとの出会い
このホスピタルクラウンは、クラウンKこと大棟耕介くんが中心となって運動を広めています。
私と大棟耕介くんとは、2003年11月にある集まりで始めて出会います。大棟耕介くんは、体格のいい大きな体にラーメンマンの髪型でとにかく目立ちます。ただ見た目とは違い、話す言葉ひとつひとつが丁寧でやさしく、聞けば、日本初のクラウン(道化師・ピエロ)を中心としたパフォーマンス集団(プレジャーB)の代表で、名古屋を拠点にテーマパーク、劇場などの舞台で活躍しているとのことです。また、この年の春に、クラウンの仲間10名とフロリダの病院を訪問したことで、この運動(ホスピタルクラウン)に衝撃を受け、「日本にも根付かせたいとの思いを抱いた」という話を熱く語ってくれました。
当時の彼の印象は、プロのクラウンに誇りを持っていて、その自分が「日本で長期入院している子どもたちに笑いを届けて元気にしなければいけない」そんな強い使命感にあふれていたように感じました。こうした彼の強い思いを感じながらも、これほど急速に運動が広がるとは誰も予測しなかったと思います。
そして、ホスピタルクラウンとしては、初の定期訪問が翌年の2004年に名古屋第一赤十字病院から始まります。
■ ホスピタル・クラウン見学
私は、ホスピタルクラウンの運動を広げるための一環で、病院での活動を見学させていただくことになりました。2006年2月のことです。 この頃になると、名古屋第一赤十字病院から始まった定期訪問の数は6か所(名古屋第一赤十字病院・名鉄病院・豊橋市民病院・三重大学付属病院・あいち小児保健医療総合センター・南生協病院)に増えていました。
小児病棟の入口には、消毒ようの手洗いが準備されています。 赤花をつけたクラウンK(大棟耕介)は、ニコニコしながら手を洗い、何の躊躇いもなく病棟に入っていきます。私は、その後を邪魔にならないように付いていきます。廊下は白く明るく清潔感にあふれていて、少しひんやりした感じです。ナースステーションでは、3名ほどの女性スタッフが働いています。日常の1ページかのように、クラウンKに気付いても、「ニコ!」っと、笑うだけです。よく来る「変なおじさん?(お兄さん)」程度なのかもしれません。
クラウンKは、ステッカーを手に隠し持っていて、廊下で出会う看護婦さん!患者さん!付き添いの人の背中にペタペタと悪戯をしながら貼っていきます。点滴を引きずりながら少女が近付いて来ました。「よっ!」っと、ハイタッチ。小児がんのその少女は、髪の毛が抜け落ちていてつるつるです。
病気の子どもたちの症状は日々変わります。明日手術を向かえる子や、退院を間近に控えている子、手術後や後遺症、薬による副作用で辛い日々を過ごしている子もいます。 だから、病室へ入るときは、静かにゆっくりと入っていき、ひとりひとりのベットに近寄り子どもの様子にあわせながらフォーマンスを繰り返していきます。小さな笑いをさそいお互いの距離を近付けていきます。クラウン(道化師)としてのパフォーマンスやメイクは、子どもとの距離を縮めたり、心を通い合わせたりする道具として利用します。最初から身を乗り出して興味深そうにしている子もいれば、最初から最後までまったく無視している子もいます。子どもたちの状況に応じて、子どもとの間を取りながら、気持ちを引き出していきます。あくまでも主役は、クラウンKでなはく子どもたちなのです。
子どもの笑顔は、ベットの横で看病している母親にとって何よりの癒しになります。母親の心が癒されると、子どもの心も癒され、気持ち明るくなっていくのがわかります。 病気の子ども、看病するお母さん、医療に従事する全ての人の心を笑いが癒していきます。真っ白で、無機質な病院の空気が、やわらかく温かくなるのがわかります。 大棟耕介くんは、子どもたちに笑いを届けています。病院は、治療を通して苦しみや傷みをとることができます。でも、希望や夢を失いかけている子どもたち、そのご家族に対して必要なのは、笑いを重ねることなのかもしれません。
私は病院訪問後、大棟耕介くんに聞いてみました。病気の子どもたち、一人ひとりに、時間をかけて、笑いで元気を引きだしていくわけですから、精神的にも肉体的にも疲れるはずです。「なぜ、そこまでして、子どもたちに会いに行くのか。」大棟くんは、「子どもたちが待っているから」と答えました。 大棟くんの運動(ホスピタルクラウン)は、病院内ということもあり人目にふれにくく、解りにくいものです。ホスピタルクラウンを応援する一人として、1人でも多くの方に、「ホスピタル・クラウン」の活動を知っていただき、応援していただける仲間を少しでも増やしていただくきっかけになればと思って、このページを立ち上げました。ホスピタルクラウンについて少しずつアップしていきたいと思います。
■ 日本ホスピタル・クラウン協会設立
大棟耕介くんことクラウンKは、ホスピタルクラウンの活動が広がるにつれ、この活動が子どもたちやご家族に、本当に必要とされていることを肌で感じていました。 ただ、このまま、自分と仕事の仲間だけで続けていくと、活動の幅に限界があり広がらないと考えていました。
日本中の子どもたちに笑いを届けるためには、もっと多くの人たちに賛同いただきご協力いただく必要がありました。そのためには、応援していただける体制を築く必要がありました。 そこで、2005年11月にホスピタル・クラウン協会を設立し、翌年の2006年6月に特定非営利活動法人日本ホスピタル・クラウン協会としてスタートしました。
このホスピタルクラウン運動(長期入院している病気の子どもたちに笑いを届ける)にご協力いただき、応援して頂ける方は、サポーター(賛助会員)としてご登録いただいています。
サポーター(賛助会員)に対しては、年4回のニュースレター(活動報告)に加え、年1回の活動報告会として感謝祭「赤い鼻サポーターのたのしいつどい」を開催しています。こちらのホスピタルクラウン協会公式ホームページよりサポーター(賛助会員)募集中です。
さらに、私も「ホスピタルクラウンになりたい」と思われている方は、全国でワークショップを開催しています。このワークショップを受講いただき、ホスピタルクラウンとしてのスキルを身に付けた方には、病院で活動いただくこともできます。詳しくはホスピタルクラウン協会公式ホームページまで
■ 訪問病院
名古屋第一赤十字病院、名鉄病院、豊橋市民病院、あいち小児保健医療総合センター、三重大学付属病院、南生協病院、国立名古屋医療センター、名古屋市立大学病院、大垣市民病院、岐阜大学医学部附属病院、安城更生病院、名古屋大学医学部附属病院、津島市民病院、愛知医科大学病院、藤田保健衛生大学病院、名古屋市立東部医療センター、京都大学医学部附属病院、聖隷浜松病院、静岡てんかん神経医療センター、静岡厚生病院、東京大学医学部附属病院、神奈川県立こども医療センター、虎の門病院、墨東病院、広尾病院、駿河台日本大学病院、鹿児島市立病院、鹿児島大学病院、鹿児島医師会病院、池田病院、今村病院、南九州病院、鹿児島県立子ども病院、今給黎総合病院、仙台医療センター、仙台市立病院、仙台赤十字病院、わたり病院、大田西ノ内病院、福島県立医科大学病院、岩手県立医科大学病院、手稲渓仁会病院、天使病院、北海道大学病院、秋田大学医学部附属病院、中通総合病院、市立秋田総合病院、秋田組合総合病院、秋田県立療育医療センター、埼玉県立小児医療センター、新潟大学医歯学総合病院、新潟県立がんセンター新潟病院、あづま脳神経外科病院、手使病院、西小樽病院(2012年8月現在、計53病院)
■ ホスピタル・クラウン活動の直近3ヵ月データ(2012年5月〜2012年7月)
ホスピタルクラウンと出会った子どもの延べ人数:5,051名 訪問回数:199回 クラウン延べ人数:477名 定期訪問病院数:53病院
■ 大棟耕介くんが病院へ行こうと思ったきっかけ
大棟耕介くんが病院へ行こうと思ったのは、2003年の春、アメリカで開催された「ワールド・クラウン・アソシエーション」というクラウンの世界大会で個人部門の銀メダルを取りました。この大会の翌日に、同じ大会に出た世界各国のクラウン10名とフロリダの病院(ホスピス)を訪問したことがきっかけだと語ります。
ちょうどこのときは、個人部門で銀メダルを取った後なので、自信満々で病院(ホスピス)を訪れたそうです。 一緒に行ったクラウンは、患者さんにそっと近寄り温かい笑いを誘う中、大棟くんは、唖然として近寄ることさえできなかったといいます。なぜなら、 死を目前にした病気の人を見て、「かわいそう、何かしてあげたい」という気持ちになったしまったからです。上からの目線で患者を見た時点でクラウンではなくなりました。相手を笑わせるどころか、自分すら笑うことができず、自分の力のなさを思い知ったそうです。 ただ、他のクラウンが、あっという間に患者さん病院全体の空気をあたたかく変える様子を見て「日本にもあったらいいんじゃないか」と思い、だったら自分がやろうと決意したそうです。
■ ホスピタルクラウンはボランティアじゃない!「0円の仕事」
大棟くんは、僕たちはボランティアじゃない、「0円の仕事」をしているだけだと言います。
ホスピタルクラウンの活動資金は、応援いただいている方からの寄付金、助成金、プレジャーB(大棟くんが代表を務める会社)の負担で何とか補っています。今のところ病院からは、お金をいただいていません。病院側からするとボランティアで来ていただいていると思われがちですが、大棟くんはあくまで仕事で行っているといいます。 なぜならボランティアという姿勢で訪問すると、双方に甘えが生じるからだと言います。ちょっとした甘えは、病気の子どもたちを傷つけたり悲しませたりしてしまうからです。
「0円の仕事」とは、プロのクラウンとして病院を訪問する者の覚悟であり、一切の甘えを許さないという自分自身への戒めなのかもしれません。
■ ホスピタルクラウンとしての課題
病院でホスピタルクラウンの活動が必要とされている今、課題は、資金と人財です。現在のところ訪問している病院からは、お金をただいていません。このままだと活動には、限界があります。(病院からは、お金はいただいておりませんが、活動に対する様々な人的支援をいただいております。)
私は、今後病院や薬品会社、行政などから支援いただくこと必要があると考えています。ホスピタルクラウンの活動は、多かれ少なかれ社会にとって必要な活動だと考えています。病気がなくなる世界が理想ですが、現実には不可能です。せめて、病気になっても生きる希望や、生きる力がわき出てくるようなあたたかで支え合う環境が必要ではないでしょうか。こうした新しい医療環境を病院に取り入れることは、医療に従事するすべてのひとにとってもメリットがあると思います。無機質な病院の空気は、患者さんの気持ちを閉ざし暗くさせがちです。病院の環境を明るくすることは、患者さんの気持ちも明るくなり元気にさせるはずです。ホスピタルクラウンは、院内環境を明るくするお手伝いができます。こうした院内環境に前向きな病院、医療従事者は、患者さんからも社会からも評価されると考えています。
また人財については、30名ほどのクラウン(道化師)が中心となって活動していますが、全然足りません。かといって、ホスピタルクラウンを育てるのは簡単ではありません。なぜなら、プロとしての技術がないと病気の子どもたちを逆に傷つけてしまうからです。ホスピタルクラウンは、気持ちだけでも、技術だけでもなれません。質の高いホスピタルクラウンを増やすためには、少しづつしっかりと育てていく体制が必要です。現在は、ワークショップを全国各地で開催し、人材の発掘に努めつつ、ホスピタルクラウンの育成に力を注いでいます。「ホスピタルクラウンになりたい」と興味がある方は、まずはこのワークショップにご参加いただきたいと思います。
■ 人間力大賞
大棟くんはホスピタルクラウンの活動で、2006人間力大賞で外務大臣奨励賞を受賞しました。この写真は、同じ人間力大賞で地球市民財団特別賞を受賞した毛受芳高くん(愛知市民教育ネット:アスクネット代表)とのツーショットです。
「人間力大賞」とは、環境、国際協力、医療・福祉、文化・芸術、スポーツ、その他の分野で積極果敢な活動・挑戦を続けている人間力あふれる若者を発掘し、さらなる活躍を期待して国民全体で応援する、青年版国民栄誉賞です。
■ 人間力大賞でのホスピタルクラウンプレゼンテーション
小学校2年生になる娘は、ガン患者です。 妻は、治療のために、もう1年以上病院につきっきりです。 抗癌剤の副作用で、娘の髪の毛は、抜け落ちてありません。 点滴の針は、何処に行くにもつけたままです。 妻は、娘の姿を見ていると、イライラしたり、憎んだり、恨んだり、悲しんだりします。 看病してくれる妻への気遣いから、娘の心も疲れています。 だから、妻は、疲れや悲しみを隠しますが、娘は、感じているようです。
大棟君の運動は、こうした病室に、笑いで癒しと元気を届けています。 クラウンの姿をした大棟君は、病室にゆっくり入っていきます。 そして、娘が寝ているベットの横で静かに語りかけます。 少しずつ心の扉を開き、気持ちを引き出していきます。
真っ赤な鼻をつけたクラウンの姿は、見ているだけで楽しくなります。 風船でプードルをつくったりして、娘を喜ばせます。 娘が、創造を膨らまし、自分から動くように導いていきます。 ときおり、聞こえる笑い声は、病院のフロアーに明るく、響きます。 娘の笑顔は、看病する母親にとって、何よりの癒しになります。 そして、母親の心が癒されると、子どもの心も癒され、元気が反響しあいます。 病気の子ども、看病するお母さん、医療に従事する全ての人の心を癒していきます。 真っ白で、無機質だった病院の空気が、やわらかく、温かくなるのがわかります。
大棟君は、子どもたちに笑いを通して気持ちを引き出していきます。 病院は、治療を通して苦しみや傷みをとることができます。 でも、希望や夢を失いかけている娘や妻に対し必要なのは、やさしい笑いなのかもしれません。
現在、大棟君は、仲間とともに、6つの病院を定期的に訪問しています。 病気の子どもたち、一人ひとりに、時間をかけて、元気を引き出していくわけですから、精神的にも肉体的にも疲れます。 なぜ、そこまでして、子どもたちに会いに行くのか、聞いたことがあります。 大棟君は、「子どもたちが待っているから」と答えました。
大棟君の運動は、人目にはふれにくく、理解されにくいものです。 この人間力大賞を契機に、「ホスピタル・クラウン」の活動をたくさんの方たちに知っていただき、運動の環が少しずつ広がっていくこと、 そして、大棟君を応援してくれる仲間がふえていくことを心から願っています。
■ ホスピタルクラウン支援へのお願い
国内では、2004年から本格的にホスピタル・クラウンの運動が始まりました。「病気で苦しむ子どもたちに少しでも元気になってもらいたい!」そんな想いに共感いただいた多くのクラウンさん(道化師)と賛助会員(サポーター)の皆様の協力で、延べ5万人以上(2012年1月現在)の子どもたちと、そのご家族、病院に笑いを届けています。しかし、それはほんの一部の病院だけの活動にとどまっています。まだまだ多くの病院で子どもたちがこのクラウン(ピエロ)の訪問を待っています。
NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会では、今後、さらに国内での活動を確実に広げていく努力をしてまいります。私たちが目指す、「全ての病院の子どもたちへ笑いを」へ向け、ご共感、ご支援いただけましたら幸いです。
NPO法人 日本ホスピタル・クラウン協会
■ 支援方法について
ただいま、賛助会員を募集しています。ホスピタル・クラウンの活動に間接的に参加していただく会員様です。
- 賛助会員費
- 学生会員 3,000円円/1年
- 個人会員 5,000円/1年
- 法人・団体会員 30,000円/1年
- 振込先
- <銀行>三菱東京UFJ銀行 中村支店 普通 5245106 特定非営利活動法人 日本ホスピタル・クラウン協会
- <郵便局>振込先口座番号 00830-4-94126 振込先加入者名 特定非営利活動法人 日本ホスピタル・クラウン協会
ご不明な点や、ご質問については、NPO法人日本ホスピタルクラウン協会 事務局へご連絡いただき、お問い合せ下さい。
日本ホスピタル・クラウン協会 連絡先:052-483-7789